メキシコシティ

 

今、メキシコシティにいる。

パチューカとグアダラハラでの仕事は無事に終わり、

明日の深夜、成田に戻る飛行機に乗ることになっている。

 

メキシコ、この国は僕にとって思い出深い土地の一つである。

 

34年前の1986年6月から9月にかけて、僕はこの国を旅して回った。

最初の1ヶ月はその年メキシコで開催されたW杯の試合を追いかけて、

続く2ヶ月はバックパックを背負ってただあてもなくバスを乗り継いでいった。

 

23歳、特に目指すものもなければ、夢見るものもなかった。

同級生はほぼ全員就職していたが、僕はとりあえず社会とか責任とかから逃げたかった。

で、実際に社会から逃げて見たものの、それはまあどこまでも退屈な時間の連続だった。

 

朝、一泊千円もしないような安宿のベッドの上で目覚める。

まず顔を洗い、次にTシャツを洗って日向に干すと、

ベッドの横の狭いスペースで腕立て伏せを100回と腹筋を200回やる。

すると、もうそれで1日の予定は終了し、あとは何もすることがない。

あんまり退屈な時は、もう一度腕立て伏せをやり、腹筋をやる。

 

昼が来ると近所の屋台に行って、地元の労働者連中と一緒にタコスを食べる。

夜が来るとまた近所の別の屋台に行って、これから商売に出かけるお姉さんたちと一緒にスープを啜る。

そういうことの繰り返し。

 

別に楽しくも面白くもなかったけれど、なんというか、ああいう時間を過ごせたのは幸運だったな、

と思ったりもする。

 

どんな風に幸運なのかはうまく説明できないんだけど。

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